再製塩とは何か|日本の塩流通構造と再製塩の正体
日本で売られている塩は、どれも同じように見えます。
スーパーに並ぶ食塩。
家庭で使う塩。
加工食品に使われている塩。
毎日使っているのに、
その塩がどこで作られ、
どう流通して、
どうやって今ここに届いているのか。
そこまで意識することは、ほとんどありません。
実は、日本で流通している塩の多くは、
- 自然塩でもなく
- 塩田の塩でもなく
- 完全な精製塩でもありません
多くが「再製塩(さいせいえん)」という構造の塩です。
この再製塩の原料になっているのは、
海外で大量生産された輸入原料塩です。
この輸入原料塩の多くは、
工業用途を前提に生産された原料塩
として作られています。
それを日本国内で再加工し、
食品用途に適合させて流通させたものが、再製塩です。
しかし、この「再製塩」という言葉は、
ほとんど説明されていません。
この記事では、
- 再製塩とは何か
- なぜ日本では再製塩が主流なのか
- 日本の塩の流通構造
- 輸入原料塩の位置づけ
- なぜ再製塩は安価なのか
- 自然塩・精製塩との構造的な違い
を、構造として分かりやすく整理します。

再製塩とは何か
再製塩は、いったん出来上がった塩を原料にして、
日本国内で作り直した塩です。
言い換えると、
輸入された原料塩を、
日本の食品流通に適合させるために、
国内で再加工して仕上げた塩です。
工程のイメージはシンプルです。
- 海外で作られた塩を輸入
- 日本で溶解
- 濾過や管理処理
- 再結晶
- 成分調整
- 食用塩として製品化
この流れを通った塩が、再製塩です。
構造として見ると、
塩 → 溶かす → もう一度塩にする
という再加工構造になっています。

なぜ日本はこの構造になったのか
1971年(昭和46年)、
日本の商業塩田は政策的に廃止されました。
現在の日本には、
- 市場に流通する商業塩田は存在せず
- 観光・文化保存・体験型の塩田のみが残っている
という構造になっています。
その結果、日本の塩は、
海外生産
輸入原料依存
国内加工流通
という構造に変わりました。
日本は、
「塩を作る国」ではなく、
「塩を加工して流通させる国」
になった、という構造です。
日本の塩の基本的な流通構造
日本の塩は、次の流れで市場に出ています。
- 海外で塩が生産される
- 日本に輸入される
- 日本国内で加工される
- 食用塩として流通する
この「日本国内で加工される」部分が、
再製塩構造です。

工業用途前提の輸入原料塩とは何か
再製塩の原料になっている輸入塩の多くは、
工業用途を前提に生産された原料塩
です。
これは、
- 化学工業
- 電解
- 水処理
- 融雪
- 工業プロセス
などの用途を想定して生産される塩です。
よくある誤解は、
工業用途の塩=危険な塩
というイメージですが、実際は、
- 主成分はほぼ塩化ナトリウム
- 危険物という意味ではない
- ただし用途管理基準が食品用途とは異なる
というものです。
食品用途では、
品質管理
履歴管理
供給管理
安全管理
が重視されますが、工業用途原料塩は、
用途安全性重視の管理構造で生産され、
**トレーサビリティ(出どころや履歴が追える管理構造)**や
食品用途向け管理思想とは別枠で管理されています。
再製塩構造では、
- 工業用途前提の原料塩として輸入
- 日本国内で再処理
- 食品用途管理構造に変換
という工程が入ります。
再製塩における溶解工程の違い
輸入原料塩を溶解する工程では、
- 淡水を使う方式
- 海水を使う方式
の両方が存在します。
淡水溶解型は、標準的な再製塩構造で多く使われる方式です。
一方、沖縄の塩「シママース」のように、
輸入原料塩を
沖縄の海水で溶かし
再結晶させる
という海水溶解型の再製塩構造も存在します。
これは、
再製塩の中にも
工程設計のバリエーションがある
ということを意味します。
構造としては同じ再製塩でも、
溶解媒体(水か海水か)によって
味・ミネラル構成・設計思想が変わる
という違いが生まれます。
重要なのは、
再製塩とは
水で溶かすか、海水で溶かすか
という違いではなく、
「再溶解 → 再結晶構造」そのものを指す分類
だという点です。
なぜ再製塩は安価なのか
直感的には、
再製塩の方が工程が多い
自然塩は海水を直接濃縮するだけ
なので、
再製塩の方がコストが高そう
と感じやすい構造です。
しかし、実際は逆です。
理由は「工程数」ではなく、
コスト構造の違いです。
原料コスト
- 巨大塩田
- 天日乾燥
- 自然エネルギー
- 超大規模生産
- 低人件費地域
による輸入原料塩は、原料コストが非常に低い。
自然塩は、
- 小規模生産
- 人手依存
- 設備規模が小さい
- 生産量が少ない
ため、原料コストが高くなります。
エネルギー構造
自然塩は、
- 海水を直接濃縮(加熱・天日・濃縮工程)
- エネルギー負荷が高い
再製塩は、
- すでに塩の状態
- 溶解は低エネルギー
- 再結晶は制御工程
エネルギーコストが根本的に違います。
規模の経済
再製塩工場は、
- 巨大設備
- 自動化
- 連続処理
- 大量生産
自然塩は、
- 小規模設備
- 手作業多い
- バッチ処理
- 少量生産
単位コスト構造がまったく違います。
物流構造
再製塩は、
- バルク輸送
- コンテナ輸送
- 規格化物流
- 安定供給
自然塩は、
- 小ロット流通
- 地域流通
- 物流効率が低い
構造的にコストが高くなります。
結論として、
再製塩は工程が多いから安いのではなく、
原料・エネルギー・生産構造・物流構造が安いから安価
という構造です。
精製塩・自然塩・再製塩の構造的な違い
精製塩
- 物質としてのNaCl純化構造
- 化学工学設計
自然塩
- 海水直接濃縮構造
- 自然生成構造
再製塩
- 輸入原料塩を使用
- 国内再加工構造
- 流通最適化構造
再製塩は、
自然塩と精製塩の中間
ではなく、
まったく別の「流通構造の塩」
です。
まとめ|再製塩の正体
再製塩とは、
- 海外で生産された塩を原料にし
- 日本で再加工され
- 食品用途管理構造に変換され
- 流通に最適化された塩
です。
日本の塩市場の中心にあるのは、
- 自然塩でもなく
- 精製塩でもなく
- 再製塩構造
です。
これは「隠された塩」ではなく、
構造として語られてこなかった塩
というだけなのです。
塩の分類構造全体については、以下の記事で整理しています。
▶ 塩の種類と分類|原料と工程で見る塩の構造
